不動産コンサルタントの高野です。
収益物件は戸建やマンションと違い、購入する人の属性が限定されがちです。戸建やマンションの購入者は多くのケースで、そこに住みたいという実需利用者です。一方収益物件の場合は、不動産投資家が主な購入者となります。戸建やマンションよりも購入者の属性が限定的であることもあり、居住用不動産よりも投資用不動産の売却の方が難易度が高い、とよく言われます。
実際に、アパートやマンションを本当は高く売りたいのに、なかなか売却の話が進まずに困っている、という人も珍しくないでしょう。
そこで本日は収益物件を1円でも高く、そして早く売却するために必要なことを解説していきます。
どうしてなかなか売れないのか?
まず、あなたの物件がなぜなかなか希望価格で売却できないのか。最初はその原因を明確にする必要があります。原因がわからないことには対策を打つことができません。
ここでは売却が希望価格で進まない際の一般的な原因を解説します。
相場とかけ離れ過ぎている
不動産には相場というものがあります。「大体このくらいの金額で取引されることが多いよね。」これが相場です。極端な話ですが、5,000万円~2億くらいの物件が多いエリアで、10億とか20億の物件を売ろうとしてもなかなか売りにくいです。
そこまで大げさじゃなく物件単体で見ても相場と乖離がある物件もあります。たとえば通常通りに査定をすれば2億の物件なのに、2.5億とか3億で売却に出しているケースなどです。ここまで明らかに割高な物件だと買い手はつきません。
ポータルサイトでもいいので、自分の物件と近しい条件の他の物件がどのくらいの価格で売りに出ているか、大体の相場感は掴んだ方がいいでしょう。
売り方に工夫がない
これは不動産会社側の話ですが、売却活動の際に何の工夫もしてない会社がありますが、それでは高く売却することはできません。もちろん一般的な相場価格での売却は可能でしょう。ただ、少しでも高く早く売りたい!ということであれば実現するのは難しいです。
したがって、「なかなか高く売れないなぁ…」と悩んでいる人は、売却を依頼している不動産会社がどのような売却戦略で動いているのかを確認しましょう。意外と「ポータルサイトに載せて終わり」「レインズに掲載しているだけ」という事実が発覚するかもしれません。
物件の長所を掴みきれていない
不動産は2つとして同じものがありません。同じ築年、構造であっても、場所が違えばまるで価値が違います。たとえ同じエリアの似たような物件でも、入居者属性の良し悪しや、リフォーム状況によっては価格に大きな差が生まれます。そのため、不動産を少しでも高く売ろうとするならば、その不動産独自の特性(長所)を見つけることが大事です。
土地が大きい、前面道路が広い、入居者属性がいいなど、物件個別の長所を見つけることで、その物件を一番欲しがるであろうターゲットも見えてきます。一番欲しがるということは、すなわち一番金額も出せるということなので、結果的に高く売却できることにつながります。
まずは長所を見つけてターゲットを絞り込むのが肝心です。
不動産会社の専門分野ではない
不動産会社と一口に言っても、その専門分野はバラバラです。事業用不動産を専門している会社、居住用不動産を専門している会社、もちろん投資用不動産を専門にしている会社など色々です。
とはいえ不動産会社は「宅地建物取引業」という免許さえ取れば、不動産のジャンル関係なく扱うことができます。そのため、特に専門でない分野の物件でも、依頼されたらとりあえず引き受ける、というスタンスの不動産会社も多くいます。そうなると、受けてもらったはいいものの、専門分野ではないので顧客やネットワークがなく、最終的に売れ残ってしまうといったケースがよくあります。
依頼する場合は不動産会社の専門分野と依頼内容が合致しているかチェックするのは必須でしょう。
不動産会社のやる気がない
残念ながらよくあるが、不動産会社に「やる気がない」というパターンです。やる気がないので積極的な営業はせず、その結果なかなか売れない、という悪循環に陥ります。
やる気がないというのは、「会社」と「営業マン個人」の2パターンがあります。会社としてやる気がないのは、専門分野ではないパターンが多いです。たとば自社ビルや自社マンションをたくさん保有している「大家業型不動産会社」は、物件を貸すのがメイン事業なので、仲介業務は積極的でないケースが多いです。
それからやる気のない営業マンにあたってしまうのも悲惨です。報告もない、営業も交渉も頑張ってくれない、結果売れない、というこれまた悪循環に陥ってしまいます。
会社としてやる気がないと思ったら依頼する不動産会社をチェンジ、担当者のやる気がないと思ったら会社に言って担当者を変えてもらいましょう。
サブリース物件である
サブリース物件とは、いわゆる「一括借り上げ」転貸している物件のことです。所有者から物件を借り上げた会社(一般的には不動産会社)が、その物件を人に貸し出して賃料を得るというパターンです。この場合、実際の所有者のもとにはサブリース会社の利益が抜かれた分の家賃しか入ってこないので、実入が少なくなります。そうなると当然利回りも悪くなるので物件価格も低くなる。さらにサブリース物件は何かとトラブルが多いので、購入者も絞られてしまいます。そのためなかなか売れない状況に陥りやすいです。
サブリース物件を売却しようと考えている人は、まずはサブリース会社にサブリース契約を解除できるかどうか確認してみることをお勧めします。
高く早く売るための方法
「売れない原因は分かった。でもどうやって高く早く売るのか分からない」という人も多いでしょう。ここでは物件を高く早く売るための方法とその手順について解説します。
重要!まずは物件の特性を知る(=ターゲット設定)
物件を早く高く売却するには、何よりその物件の特性を理解するのが先決です。不動産は2つとして同じものがありませんので、個々の独自の特徴を掴むのが重要です。
なぜかというと、特徴を掴むと、その物件を一番高く評価してくるのは誰か、ということが見えてくるからです。
たとえば築年数が古い木造なんて買う人いるのかな?と思うかもしれませんが、短期間で減価償却させて節税効果を狙いたい高所得者の方など、一定数の需要はあります。物件の特性を掴む、というのは物件を早く高く売るための最初の一歩であることは間違いありません。
そのターゲットに対して効果的な営業をする
物件の特性を知ってターゲットを知ることができたら、そのターゲットに対して最も効果のある営業をしていきます。ターゲットの年収や年齢などの属性について仮説をたてることで、どのような提案をするのが一番効果があるか判断できます。たとえば、収入がたくさんあって節税をしたい人に向けて、「この物件を買えばあなたの収入がぐんぐん上がります!」と言っても全く効果はありません。
他にも、物件をもっとも評価してくれるのが、その地域に根付く企業だとします。このケースでは、いくら楽待や健美家などのポータルサイトに掲載してもあまり効果は得られないでしょう。
地場の不動産会社と深く繋がってる可能性があるので、私だったら地場の不動産会社へFAXを送付したり、金融機関をリストアップして片っ端から電話営業して紹介をお願いしたりすると思います。
このように、早く、そして高く物件を効率的に売却したいのであれば、ターゲットを絞って、そのターゲットに情報が届くように効果的な営業を行うのが最も可能性のある方法です。
不動産会社をチェンジする
ここまで解説した内容は、所有者自ら行うものというよりは実は「不動産会社」が実施するべきものでした。そのためいくら所有者が内容を理解して実践しようとしても、肝心の不動産会社が動いてくれない限りは何も解決しません。
どれだけ頑張っても思い通りに売れないな、と感じる場合は、不動産会社に問題があるかもしれません。ある程度任せてみて成果が出ないようであれば、思い切って不動産会社をチェンジするというのも得策です。ぜひ検討してみてください。
まとめ
不動産は適正な価格が分かりにくく少し複雑な面もあるので、希望通りに売れなくても「まぁ、しょうがないか」と思ってしまう人もいます。
しかし、売れない理由を冷静に分析し、物件の特性を分析することで、その物件を紹介するべきターゲットが必ず見えてきます。そのターゲットに対して効果的な営業を行い継続することで、物件は早く高く売ることができます。
物件がなかなか売れない…、と悩んでいる人は、本日の内容を実践することで割とすぐに売却できる可能性があります。ぜひ試してみてください。
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 / 不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。 現在は(株)高野不動産コンサルティングを設立し、投資家や事業法人に対しての不動産コンサルティングを行う。 / 保有資格 ・公認 不動産コンサルティングマスター ・相続対策専門士 ・宅地建物取引士 ・賃貸不動産経営管理士 など