不動産コンサルタントの髙野です。
不動産投資をする際に誰しもが悩む「構造」について考えてみます。不動産投資で一般的な構造は「RC(鉄筋コンクリート)」、「S造(鉄骨造)」、および「木造」です。鉄骨鉄筋や軽量鉄骨もありますが、一般的には先述した3パターン多いと思います。どの構造にもそれぞれメリットデメリットがあります。また、各構造に特化した金融機関や、特定の物件情報を多く扱う不動産会社も存在します。そのためどの構造で物件を探していくのは、イコール不動産投資といっても過言ではないくらい重要な話です。
最近の不動産投資の動向を見ながら、私は「これから買うなら鉄骨造以外」にした方がいい、そう思っています。もちろん鉄骨造でも割安だったり好立地だったりといい条件の物件もあるので、それらは例外です。あくまでも「構造」という条件だけで選ぶならおすすめはしない、ということです。今日はそんな話をしてみます。
RCをお勧めする理由
まず一番最初にお勧めするのはRC(鉄筋コンクリート造)の物件です。不動産投資=マンション投資と考える人はおそらくこのRCを想像するのではないでしょうか。やはり不動産投資の王道というだけあってメリットも色々あります。ただ注意点もあるので説明していきます。
耐用年数が長い=融資期間に影響
RCは法定耐用年数が他の構造と比較し最も長いです。法定耐用年数とは会計上の年数のことで、構造ごとに定められています。減価償却できる年数、と言ってもいいでしょう。この年数が長ければ長いほど「建物として長持ちする」と解釈されてます。RCであれば47年が法定耐用年数です。つまり建物47年間寿命が継続するとみなされるわけです。実際には建物は47年経ったからといって消滅するわけはなく、実際の物理的な寿命とは異なるわけですが、ただ、金融機関が融資を行う際、これは重要な指標の一つです。RCは他の構造の建物と比べても耐用年数が長いので、その分融資期間を長く設定できる傾向があり、不動産投資家にとって大きなメリットと言えるでしょう。
探してる人が多いので売却しやすい
RCは耐用年数の長さや頑丈さから不動産投資家から人気が高い投資対象の一つです。そのため、いざ不動産を売却しようと考えたときに、求めている投資家が多い分、売却までの期間が短くスムーズに行える可能性があります。一般的に不動産は売却しくいもの=流動性リスクが高い、と思われがちですが、不動産投資に関しては、鉄骨造よりもRCの方が取引の数も多いのではないかと思います。流通が盛んなので、売却しようと思ったときに困りにくい建物です。
不動産投資も投資ですから必ず売却時(出口)があります。売りたいときにすぐに売れる物件を持つ、とうことも不動産投資家としてのリスクヘッジになるのではないかと思います。
RCのデメリット(高い)
RCは他の構造と比較して頑丈な造りをしています。その分壊れにくく倒壊もしにくです。しかし、その分建築費や維持費も高い傾向にあります。建築費も、木造や鉄骨造と比較して高いので、仮に中古物件でも築年で利回りが同じ条件ならRCの物件価格が一番高くなる傾向です。また、RCは比較的建物全体の規模が大きいものが多いです。そのため、設備もエレベータ付きであったり、特定建築物の定期報告があったり、小規模な建物と比較し維持費も高いです。
木造をお勧めする理由
木造は不動産投資の中でも小ぶりの物件が多く、価格も小さいので一棟不動産投資の中では登竜門的な立ち位置で人気が根強いタイプです。不動産投資を始めるなら木造をお勧めすると思います。木造物件の特徴を見てみましょう。
価格が低めなので購入しやすい
木造不動産投資の一番の魅力は「価格が小さいので取り組みやすい」という点じゃないかなと思います。木造で建築する建物は、RCやS造と比較して小さくなりがちです。物件規模が小さいのと、そもそもの建築費自体が他の構造と比較して安いので、物件価格が低めです。そのため、初めて一棟不動産投資に挑戦したい、余剰資金を不動産投資に回したい、といったニーズがある人には向いてます。
また規模が小さいので購入検討できる人も多く、その分いざ物件の売却を考えた時に買い手に困りにくい不動産投資物件です。取引自体は、RC、S造、木造の中ではもっとも木造が多いのではないかと思います。
築古なら節税効果が得やすい
木造の耐用年数は22年です。RCの47年と比べると半分以下の期間です。22年超えの物件は世の中に多く存在しますが、耐用年数を経過した木造の場合は、4年間で減価償却することができます。たとえば、5,000万円の耐用年数切れの築古木造アパートを場合、物件価格の5,000万円のうち建物部分が4,000万円だとしたら年間1,000万円も償却できる計算になります。償却というのはキャッシュフローに関係せずマイナス計上できるものなので、たとえば、最終手残りが300万円入る物件を5,000万円で購入した場合、最後に減価償却で1,000万円マイナスにできるので、実際には300万円お金は増えていますが、700万円の赤字で計上できます。本業の所得が高い人は所得税を多く払ってる傾向があるので、このようなやり方で支払う税金を抑えつつ資産を増やすことも可能です。
維持費が比較的安い
木造はRCやS造と比べて、コンパクトな建物が多いです。大体2~3階建なのでエレベータはほぼつかず、規模によってはRCでは義務化されてる定期報告も不要だったりするので維持費があまりかかりません。よく不動産投資家の失敗談あるあるで「こんなにお金がかかると思わなかった」というものがありますが、木造に関しては維持費があまりかからないので、大きく失敗することも少ないでしょう。
どうして鉄骨造をお勧めしないのか
さて、ここまでRCと木造をお勧めしてきました。どうしてS造をおすすめしないのか、その理由を説明します。
探してる人が少ない傾向がある
まず、私が普段不動産の実務をしている中で、「RC」と「木造」で探している人は多いのですが「S造」を探している人は多くありません。RCなら耐用年数が長いので長期で融資を組むことが可能です。木造は利回りが高めの傾向があるので、高利回りだったり上述した減価償却を利用した節税を目的としている不動産投資家が多いです。ただ、S造はそのどちらの目的としても中途半端感があります。耐用年数は34年なのでRCほど長くない、かといって規模は大きなものが多いので、メンテナンスや維持費にお金がかかる。といったデメリットもあります。
そのような理由から、そもそもS造に絞って探している不動産投資家というのは、実際にはほとんどいないのではないかと思います。探している人が少ない、ということは今後物件を売却しようとしたときに苦労する、とも同じ意味になります。実際にS造の物件を持っていて、売却で苦労している人をたくさんみてきました。不動産の流動性リスクは高めといえるでしょう。
銀行融資で苦戦する傾向がある
S造はRCほど耐用年数が長くないので、金融機関の融資付で苦労する傾向があります。木造なら価格自体が小さいので、ある程度頭金を入れれば物件の評価がそこまでなくても購入できる人も多くいます。しかしS造はRC並に物件価格が高いケースも珍しくありません。融資はつきにくいけど物件価格は高い、ということで、なかなか購入できる人が少ない傾向があります。
やはりこれも実務でやっていて感じるのですが、S造でも立地がいいとか利回りがいい、という理由で売却の反響が多い物件もあります。ただ、実際に話が進んでいくと、購入検討者の方から「融資がつかなかったので見送ります」という回答で話が終わるケースによく直面します。銀行融資で苦戦しやすい物件というのは、売約時にも多くのケースで苦労しますので、なるべく避けた方が無難でしょう。
まとめ
不動産投資を始める際の構造の考え方について解説しました。最初にもいいましたが、不動産投資は投資ですので、すごくいい条件の物件で採算がとれそうなら構造関係なく購入するべきだと思います。なのであくまでもケースバイケースです。一般的にはRCと木造が無難でおすすめです、という内容です。
実際に物件を検討する際には「この場合はどうなんだろう」と悩むことも多いと思います。物件ごとにリスクも異なるので購入判断には細かい精査が必要です。実際に購入検討する際には今日の構造のことだけでなく様々な要因の中から最終的に決断をしてもらえればと思います。
それでは本日はここまで。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 / 不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。 現在は(株)高野不動産コンサルティングを設立し、投資家や事業法人に対しての不動産コンサルティングを行う。 / 保有資格 ・公認 不動産コンサルティングマスター ・相続対策専門士 ・宅地建物取引士 ・賃貸不動産経営管理士 など