不動産コンサルタントの高野です。今回は赤字の不動産投資で悩むオーナーさんへ向けた記事です。
投資用のアパートを購入してみたはいいけど、気づけば空室が増え、支出も増え、いつの間にか大赤字に。不労所得どころか持ち出しをしなくては維持できない状態になってしまった。今日はそんな赤字経営のアパートオーナーさんに向けて、アパート経営が赤字の際にするべきことについて解説していきます。
赤字の種類を確認しよう
自分のアパートがいまいち収益が上がっていない、むしろマイナス気味だ、という人は、まずはその赤字の種類を確認しましょう。不動産経営で赤字といっても実は2種類あります。「キャッシュフロー」そして「会計上の利益」です。キャッシュフローがマイナスならば問題ありですが、会計上の利益が赤字なら、これは必ずしも悪い状況ではありません。まずはそれぞれの違いを確認してみましょう。
キャッシュフローがマイナス
キャッシュフローの赤字というのは、簡単に言うと「実際のお金の収支」のこと。たとえば、家賃収入が年間500万円で、管理費や修繕費、税金や返済などの支出合計が550万円の場合、年間キャッシュフローはマイナス50万円です。予備のお金があれば大丈夫ですが、これを毎年繰り返してしまうといつか必ず資金がショートして倒産、アパート経営でいえば差し押さえや競売、といった事態に発展していきます。
したがって、アパート経営においてキャッシュフローがマイナスになるメリットは一つもなく、赤字の状態の人は一刻も早く手を打たなくてはいけません。
会計上の利益がマイナス
会計上の利益というのは、帳簿上の数値、つまり税務申告する際の損益計算表において赤字になってる状態のことです。不動産投資では「減価償却による赤字」ともいえます。減価償却とは、建物の購入費用を数年間にわたって費用として計上することです。実際は手元からお金がでていくわけではなく、会計上の処理としてマイナスになります。手元からお金が出ていかない、という点がキャッシュフローとは大きく異なります。
会計上の利益がマイナスでキャッシュフローがプラスならOK
不動産投資におけるマイナスと言っても、重要なのは会計上の利益なのかキャッシュフローなのか、どちらを指しているのか、ということです。
キャッシュフローがマイナスならすぐに手を打つ必要があります。ただ、会計上の利益がマイナスでキャッシュフローがプラスであれば、それは「良い赤字」とも言えます。
手元のお金はプラスとして残りつつ、帳簿上は赤字なので所得がなくなり税金を支払わなくてOKだからです。
キャッシュフローが赤字になる理由を探ろう
キャッシュフローがマイナスになると、事業継続のための資金が不足してしまいます。そのため必ずどこかで資金ショートが起こります。今キャッシュフローが赤字の人は、まずはその原因を突き止めて、対策していくことが必要です。
収入が少ない
キャッシュフローが赤字になってしまう人の多くが、そもそもの収入が少ないです。アパート経営で主な収入といえば家賃収入です。家賃収入が少ない理由として最も多いのが、「空室」です。それから入居者の入れ替えの激しさも挙げられます。空室が多くなれば当然家賃が入らないので年間収入は減少します。好ましい入居率というのはエリアや築年数によって異なりますが、やはりどんな物件でも100%を目指して空室対策を行うべきでしょう。地方で築年数経過している物件でも90%以上を目指し、80%以下になったら危険信号です。
それから入居者の入れ替えが激しい物件は、空室期間も長期化する傾向があります。入居者が安定しない物件は、入居者向けのサービスを充実させるなどして退去者を減らす工夫が必要です。
支出が多い
空室は少ないけどキャッシュフローが悪いという人は、支出部分が膨らんでいる可能性があります。アパート経営では様々な支出があります。何も考えずに管理会社の言うことだけ聞いてるのは危険です。必要のない修繕をしていたり、募集経費もかけすぎな場合もあるからです。修繕費や募集経費はアパート経営を圧迫しますので、年間どの程度かかっているのかよく確認しましょう。
その他にも、たとえば火災保険料や法定点検費用等も見直せる可能性が高いです。一度に大きなお金が出る項目だけに、定期的にしっかり見直す必要があります。また金融機関からの借入金利も同様で、借入から数年経っている人は、金融機関に金利削減の交渉をしてみるとか、他の金融機関に借り換えの相談をするなどして、削減できないか確認することをおすすめします。
不動産投資の全体の収支項目を洗い出す
アパート経営、と一口に言っても、収入、支出で様々な項目があります。まずはどのような項目があり、そして項目ごとにどれくらい年間で発生しているのか数値に落とし込むことが重要。まだやったことのない人は次の表を参考に項目ごとに簡単に作成してみましょう。
赤字への対策(収益を改善する)
キャッシュフローが赤字になっている原因を突き止めたら、次はその対策です。収入は増やし、支出は減らす。この当然のことをしっかり行いましょう。収入と支出ごとに収益改善方法を解説します。
収入を増やす
アパート経営で収入を増やす方法として一番手っ取り早いのが「空室をなくす」ことです。空室がなくなれば、物件としては収益力が最大限高まっている状態になります。空室がある人は、管理会社と相談し、どうやって空室を埋めるのか話し合いましょう。まれに話し合いに応じてくれない管理会社、やる気がない管理会社が存在しますが、そのような管理会社は早急に変更した方が良いと思います。
管理会社の変更についてはこちらの記事を参考にしてください。
支出を減らす
収入を高めるのと同じくらい支出を削るのも重要です。アパート経営では様々な支出項目があって削れる項目は多いのですが、私の経験上最も手っ取り早く削れるのは「修繕費」です。
修繕費は入居者が退去したあとの原状回復工事、それから室内や共用部分などの設備関係の修繕等が挙げえられます。アパートオーナーさんはこのような工事関係一式を管理会社に依頼していることが多いのですが、管理会社の見積もりは基本的に高いです。言われるがままに実施してたらいつまで経っても収益改善はできません。一つ一つの見積もりを確認し、その項目は必要か不要か、そして、単価は妥当なのかどうかをしっかりと見極めましょう。自分では判断できない、と言う人は迷わず第三者のコンサルなどを入れるべきです。
原状回復工事削減についてはこちらの記事に書きました。参考までに。
それでもダメなら売却へ
収入を増やすために満室にした、修繕費も削減して大幅に支出は減った、それでもキャッシュフローが赤字のまま。もしもこんな状況の人はこの先物件を持ち続けてもマイナスが続く可能性が高いです。おそらく最初から割高な物件を買ってしまったのだと思います。そのような人は収益改善だけでなく、売却という選択肢も視野に入れましょう。
売りやすい状況に整える
収益物件を売却する際、次に買う投資家に対しての見せ方を良くしておくことは重要です。たとえば、満室状態にしておくことは当然として、滞納者がいた場合はきっちり精算しておく、もしくは強制執行をかけて追い出しておく、といった配慮が重要です。それから、共用部が汚れていたら綺麗に清掃しておく、放置自転車が散乱されていたら業者に依頼して撤去しておく、といった対応も必要です。
売却のタイミングかどうか確認
不動産価格は市況があるので、タイミングによっては高く売れたり安く売れたりします。そのため、今自分のアパートの価値がどの程度なのか客観的に把握しておくのは重要です。また、個人で保有している場合は、保有期間によって売却時の税率が大きく変わります。それから不動産を売却する際は、仲介手数料や印紙代など諸経費もかかります。金融機関への繰上げ返済手数料が発生する場合もあります。
したがって、単純に売買価格がいくらかということだけでなく、「いくら手元に残るのか」を正確に把握しておくことが大切です。
まとめ
今回はアパート経営が赤字の人がとるべき対策について解説しました。実際に赤字といってもキャッシュフロー、会計上の利益、という2つの見方があることを理解してもらえたと思います。
キャッシュフローが赤字の人は、すぐに対策を取らないと、アパートの差し押さえ、競売など大きな問題に発展する可能性があるので十分注意が必要です。
空室対策や修繕費削減など、できることはたくさんありますので、早速行動に移してみてくださいね。
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 / 不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。 現在は(株)高野不動産コンサルティングを設立し、投資家や事業法人に対しての不動産コンサルティングを行う。 / 保有資格 ・公認 不動産コンサルティングマスター ・相続対策専門士 ・宅地建物取引士 ・賃貸不動産経営管理士 など