不動産コンサルタントの高野です。
この時期は不動産の売買も動きますが、特に賃貸市場の動きが最も活発な時期なので、不動産オーナーの方にとって有益になる情報を書いていきたいと思います。
よくネットでは満室にするための空室対策として色々なテクニックが書いてあります。
確かに満室にするためには「入居を決める」というのも大事なのですが、それと同時に「退去を減らす」というのも非常に重要です。
そもそも空室にならなければ、入居を決める作業も不要です。当然、入居を決めるために必要なAD等の経費も不要。もちろん退去がなければ原状回復工事費用も発生しないわけです。
でも多くの大家さんは、「退去者を減らす努力」というのをあまり積極的にしていないのではないだろうか、と思うのです。
ということで今日は退去者を減らすためのアイディアを考えられる範囲で出し続けてみたいと思います。
1、定期的なメンテナンスと改修
建物や設備の老朽化は避けられませんので、入居者の入居期間中に様々な不具合が発生します。定期的なメンテナンスと設備交換を積極的に行うことで、入居者が快適に生活できる環境を整えてあげるのが重要です。入居が決まったらあとは何もしない、だと入居者はもっと環境がよくて快適な物件に引っ越してしまいます。ちゃんとケアしましょう。
2、清潔な共用スペースの維持
これは基本的なことですが、入居者にとって共用スペースの清潔さは非常に重要です。定期的な清掃と整備を行い、良好な印象を維持してください。管理会社に任せているとしても、その内容で本当に問題がないか、共用部はきれいになっているか、蜘蛛の巣などないか、などちゃんとそこに住む入居者の立場になって確認するといいと思います。
3、セキュリティの向上
安全性は入居者が住む上で非常に重要な要素です。防犯カメラをはじめとしたセキュリティシステムの導入や交換を検討してみましょう。「この物件はなんとなく気味が悪いから引っ越そう…」という理由は意外と多いものです。
何を隠そう私自身20代前半にこの理由で引っ越しましたから。(駅から徒歩2分で超絶便利だったのですが、残念。)
4、価格設定の適正化
一般的に家賃というのは年数に応じて下がっていくものです。でも大家さんからは家賃の減額をすることは少ないです。競合との比較を踏まえて適正な賃料の改定をするべきです。そうすることで長期的な入居を促します。何年も前から住んでくれている入居者にとって、築年数は経過して古い物件なのに、家賃水準が他の築浅物件と変わらなければ、そこに住み続けるメリットは特にありません。
5、緊急時の迅速な対応
これは入居者というよりも管理会社が該当することが多いのですが、緊急時の対応を迅速にするのは本当に重要です。水漏れや設備の故障など、緊急時には素早くかつ適切に対応を行わないと入居者の不満が増えて退去につながります。大家さんができることは、管理会社がちゃんと対応してるか正確に把握すること、それから設備の修繕や交換など判断を求められた際にはできるだけ時間をかけず決断すること、この2点だと思います。
6、ペットの受け入れ
ペット可の物件は特に需要があります。「ここは住みやすくていい物件なんだけどペットが飼えないから引っ越そう」という入居者は意外と多いです。ペットを飼いたい既存の入居者に対して、ペット可のオプションを提供することで、より長期的な入居を促すことができます。
注意点として、他の入居者の意向も聞いた上で決定しないといけません。中には動物にアレルギーや恐怖感を持っている人もいます。そうすると逆効果で、ペット可にするとクレームになったり退去につながってしまいます。
7、騒音対策の徹底
共同住宅に住む入居者が抱える不満の中でも特に多いのは「騒音問題」です。音の問題で退去する人は非常に多いです。管理会社にそのようなクレームが入っていないか、入っているならどのような対策をしたのか(してるのか)確認しましょう。部屋の防音対策を実施することで音が軽減される可能性はあります。それにそこまで大家さん自ら積極的に対応してくれる物件は少ないので気持ちの面でも入居者から好意を持たれるはずです。
よく、「入居者同士の音は防げない」という大家さんや管理会社の人がいますが、私はそれは少し違うと思います。
そもそも、例えば工場勤務の単身者と、0〜3歳の子供がいるファミリー家庭ではまったく生活習慣が違います。このように生活習慣が違う入居者が、上下・左右で組み合わさせると多くのケースで音問題が勃発します。これは生活スタイルが原因なので確かに防音対策等で解決できるものではありません。
それなら他の部屋で空室があるなら、引っ越し費用は全額オーナーさん負担で移動してもらう、というも得策です。できることは無限にありますので、諦めずに入居者が抱える問題を積極的に関わって一緒に解決する姿勢こそ大事だと思います。
補足:アンケートの実施がおすすめ
今日は退去数を減らすための取り組みを解説しました。
今まで特に何もやってこなかった大家さんは、今後は「いかに退去数を減らすか」ということに目を向けて賃貸経営をされると結果的に年間の賃料収入は安定します。
ただし、やみくもに何でもかんでもすればいいわけではありません。物件ごと、入居者ごとに、効果のある方法は異なります。間違ったことをすると逆効果になったり、お金が無駄になります。
どのような対策がもっとも効果があるのか、それを判定するためには「入居者の声」を聞くのが最も近道です。
具体的には管理会社を通してアンケートを実施するのがお勧めです。アンケートを見ると、入居者は普段どのようなことに不満を抱えているのか、ということが分かります。
もしも「駐輪所が暗くて怖い」こう書いてあったなら、すぐにLEDライトを取り付けましょう。数千円の投資で、数ヶ月(もしくは数年)入居期間が延びると思ったらものすごくコスパのいい投資だと思いませんか?
それでは今日はここまで。
今日もご覧いただきありがとうございました。
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 / 不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。 現在は(株)高野不動産コンサルティングを設立し、投資家や事業法人に対しての不動産コンサルティングを行う。 / 保有資格 ・公認 不動産コンサルティングマスター ・相続対策専門士 ・宅地建物取引士 ・賃貸不動産経営管理士 など