不動産コンサルタントの高野です。
よくお客様に「高く売るためには建物を修繕した方がいいですか?」と聞かれることがあります。
結論から書きますと、「何もせずに売り出すのが一番いい」
これが私の考えです。つまり、大規模修繕はせずにそのまま売りに出す、こういう話ですね。
ちなみにここでいう修繕とは、室内のリフォームや共用部設備の不具合箇所の修繕だけでなく、建物全体の大規模修繕のことも指します。
大規模修繕とは、主に屋上防水や外壁塗装などです。
建物は年数の経過とともに劣化しますので、しっかり維持していくためには大規模修繕は必須です。
建物の構造や、最後に大規模修繕を実施した時期によって、実施すべきタイミングは異なります。
大規模修繕は建物を長持ちさせるだけでなく、パッと見の印象がよくなる効果もあります。
そのため購入検討者の購入意欲も高まって高く売れるのではないか?と考える人がいるわけなんですが、必ずしもそうとは言えません。
不動産投資家によっては大規模修繕せずに徹底的に利回りを高くとして収益を出したい、と考える人もいます。
そのような投資家のニーズというのは「修繕してほしい」ということではなく「値下げしてほしい」というのが本音です。
大規模修繕費用というのは非常に高額で、鉄筋コンクリート造のマンションだとあっという間に1,000万円を超えてきます。
大規模修繕工事をしたことがない人のためにさらっと一例を書くと、一般的な大規模修繕費用というのはざっとこんな感じになります。
※延床300平米のRC15世帯の建物を想定
・仮設工事:80万円
・足場仮設工事:200万円
・外壁塗装:300万円
・外壁補修:150万円
・シーリング工事:130万円
・防水工事:400万円
・その他工事:70万円
合計:1,330万円
このようにRC15世帯くらいの小中規模のマンションでも簡単に1,000万円を超えてしまいます。
重要なのは、この1,000万円以上の工事の価値と、1,000万円の値引きを天秤にかけたときにどちらを選ぶ人が多いのか、ということです。
私の経験から言うと、基本的には工事はしないで売りに出した方が決まりやすい、と思います。
いくら大規模修繕実施済み、と言われても大規模修繕未実施の物件と比べて利回りが低くなってしまうと、あまり魅力的に映らないからです。
それなら何もせずに利回りを高めに出して、反響が多くなってきたところで、その予算を指値交渉の材料として使っていった方が決まりやすいと思います。
築年数の経過した物件を売りに出そうとする人は、まずはそのまま、何もせずに市場に出して感度を確かめてみる、という方法がおすすめです。
実際、先日約8,000万円のRCをお客様に紹介したところこんな話がありました。
その物件は売主さんの方で大規模修繕を実施する予定でした。ところが購入検討者さんは「大規模修繕しなくていいから1,000万円下げてほしい」と、こう言うのです。
実際に大規模修繕に必要な費用は1,300万円でした。しかも請負契約も締結済みで今更キャンセルもできない。非常に困った状況です。
結果どうなかったかというと、購入検討者は修繕の有無とかではなく利回り重視の人だったので、この物件の購入を見送って、他の物件を買ってしまいました。
このように、大規模修繕は購入を検討する人にとって、プラスになることもあれば、プラスにならない場合もありますので、雨漏りが起きてるなど、今すぐにやらなくてはならない事情があるわけでなければ、今の状態のまま売りに出した方が結果的に売主さんにとってはプラスになるんじゃないかなと思います。
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役 / 不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。 現在は(株)高野不動産コンサルティングを設立し、投資家や事業法人に対しての不動産コンサルティングを行う。 / 保有資格 ・公認 不動産コンサルティングマスター ・相続対策専門士 ・宅地建物取引士 ・賃貸不動産経営管理士 など